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“Day by day, in every way, I’m getting better and better.” 「日々に、あらゆる面で、 私は益々よくなってゆく」 クーエの有名な暗示文です。
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驚いた事がいくつかある。
大きな大きなたんこぶ(これでも相当マシになったらしい)

まったく送った覚えの無い業務メール(意外と中身はしっかり)

親と電話で話したらしいが薬のせいかしゃっくり交じりで全く会話にならなかったとの事。

その日あたしは黒のランジェリーキャミに黒のロングスカート。首には深紅の牛皮の、腰まであるチョーカーををまいていたはずだけど何故かブラもパンティもつけず着衣のまま冷たいシャワーを浴びベッドに横になってた。

そして最大がこれ。

「きょうが何日で、あなたとけんかしたのがいつなのかもわすれたけど
 薬胃っぽい飲んだらぐるぐるして げんかい たけて」

という誤字脱字満載な情けないメールがメールボックスにあった。

助けを求めたらしい。

全く覚えてない。

1 しょーもない喧嘩をした。あたしを認めて欲しい、寂しいといった事  を覚えてる。

2 彼はそれを理解しなかった。拳を震わせ出て行ってしまった。

3 あたしはぼんやり見送り猫を抱いた。
  頓服のレキソタン5m錠を二錠一気に飲み
  馬鹿になったあたしは残りのレキソタンを全て飲み干した。

4 飢餓感に襲われ家にある安定剤を全て飲みつづけた。

5 トレドミンには手を出さなかった。SNRIでは簡単に死ねないし気分が  悪くなるので嫌いだった。

6 うちにある精神安定剤は穏やかなものが多い。デパスやレキソタンや  リタリンは素敵だけど眠くなってしまってもったいない。

7 ワイパックスを全て飲み干し、セディール等の穏やかな薬が半分胃の  中に消えた頃記憶が飛ぶ
  おそらく助けて欲しいとおろかにも懇願したのはこの頃なのだろう。

8 まっしろ。 おぼえていない。物音。 すごくすごく寒かった。

9 足がいっぱいある夢をみた。
  誰かに頬を叩かれ少し憤慨したが顔を近づけられた雰囲気があり、
  何故かステキングだと思い気をよくした。

10 体がふわふわとする。硬いものに乗せられぐるぐるとまわる。

11 狭い中で誰かが何かを言うのだけれど目が開かない。

12 誰かがあたしの右手を握る。握り返したがゴムの感触。
  彼ではないみたい。

13 意識レベル2から3という怒鳴り声が聞こえる。

14 どうも受け入れ拒否されている様だ。みんな困ってる。

15 もうここで降りてもいいのに、と言いかけるが手も動かず口すら開か  ない。

16 どこかについた。何か色々された。覚えてない。彼が居ない。

17 おもむろにでかいチューブを入れられた。鼻の奥と口の奥が痛い。

18 鼻水と涙とよだれで死にそうになる。あ、生きてる生きてるあたし。

19 チューブが完全に挿入される直前に自然嘔吐。
  「吐けるだけ吐いちゃおう」と聞こえる

20 そんな勝手な、と思いながらも、
  過食嘔吐経験が生きているのかおもしろい程出る出る。  
  茶色い液体の中で、真っ白の錠剤が大量に出て、カコンカコンとバケ  ツにぶつかる様子がなぜかおもしろくって、おもしろくって、少し心  の中で笑ってしまった。


21 汚物を吐き出し続けるあたしに、若い医師が
  「髪汚れちゃったね、後で拭こう」と言ってくれる。
  そんな事気づかなかった。うれしかった。

22 また記憶が飛ぶ。ベッドの背もたれが立ち上がり座らされる。
  看護婦の声が聞こえる。「まだ処置中なので中には・・」
  

23 気が付けば左手甲と右腕に点滴。左手甲の点滴がうまくいっていない  らしく苦戦しているようだ。
  違う医師が来て何か直していった。若い医師が「さすが」と言った。
  
24 若い医師がちらちらとあたしを見ながら言った。
  「何があったのかは、僕らにはわからないかもしれないけど・・」
  後は聞こえなかった。
  あたしは「たんこぶができて、痛い」とだけ言った。

25 そうこうしているうちに帰る事になったようだ。
  あたしは裸足なのでぺたぺた歩く。
  一人では歩けないので何人もの医師にささえられて歩いた。
  ささえる輪の中に入らず彼が遠巻きに
  「シンデレラみたいだな」と言った。
  あたしが言うのもなんだけど、それは場違いな発言だ。
  謝りなさい、みなさんに、と心の中で言っておいた。

26 タクシーが来た。 敬語のできない運転手に異常にむかついた。
  怒鳴りそうになったがあたしは大人だ。紙とペンで勝負だ。
  だが肝心のペンが無い。いくら探しても無い。
  広告の紙をちぎって「くそ」と切り抜き広告入れに戻しておいた。
  読めただろうか。

27 家についた。あんまり覚えていない。
  髪と服が消毒液臭い。
  優しい言葉をくれた医師は、あたしへの優しい言葉を違える事なく、
  きちんと拭いてくれた様だ。
  
28 シャワーからあがると、彼がリビングでTVを見ていた。
  無性に腹が立ち、彼を引き倒し、首を絞めて、
  壁に押し付けたが力が入らなかったので、
  爪を思い切り立ててやった。

29 爪を立てられた彼はさすがに苦しそうな顔をしていたけれど、
  あたしを怒鳴ることも押しのけることもなかった。
  ただ、悲しい顔をして、ただただ狂ったあたしを見ていた。

30 あたしは情けなくなって泣きながら、
  「あたしを認めろ!!!認めろ!!!認めてよ!!」と叫んだ後、
  
  「あたしが死ねば、
   あたしさえ死ねばあたしの存在をみとめてくれる?」と
   尋ねた後記憶が飛んだ。
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