“Day by day, in every way, I’m getting better and better.”
「日々に、あらゆる面で、
私は益々よくなってゆく」
クーエの有名な暗示文です。
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息が止まった。
時間すら止まった気がした。
夢を見ているような、それで居て生々しいほどの現実感を感じる様な。
あたしは緊張していた。
心臓が跳ね上がる。
この子だ!この子だ!この子だ!この子だ!!!!
思った瞬間、彼女は初めて、聞きなれた高く、甘えた声で、
「ニャー・・」とか細く鳴いた。
おそらく彼女もあたしだとは半信半疑だったのではないのだろうか。
声で入念にコミュニケーションをとり、
この人間は危害を加えないのではないかという予測の元に、ゆっくりと近づいてきたのだろう。
そして、においをかいで、あたしの顔を近くで見て、やっとあたしだと気づいて、
思わずいつもの声が出たのだろう。
だがもう離れて随分経つ。
今すぐ抱き上げて抱きしめたいけれど、驚かせてはいけない。
忘れられているのかもしれないし、何よりあたし自身、
興奮していて、手も足も心臓も体中の震えがとまらない。
止まれ! 止まれあたしの全て!!!
彼女に伝わってしまっては彼女を怯えさせてしまう!
お願い、とまって!!
慎重に慎重に、優しく話しかけながら、彼女の後をゆっくりと追いながら、中庭をくるくると回る。
彼女はあたしがついてきているか振り向いて確認しては、また歩き出す。
そしてある時突然、振り向き様にあたしを見つめ、
ニャンと鳴かれた瞬間、あたしは彼女に許された気がして、初めて彼女に触れた。
彼女は軽かった。かつてないくらいやせ細り、
毛もぼさぼさで、爪もはがれていて、少しの物音で異常に怯えていた。
泣いてしまった。だめだだめだ、動揺が伝わる。
でも我慢できなかった。ぶさいくに泣いて、泣いて、泣いて、抱きしめて、抱きしめて、抱きしめた。
発見の知らせを受け彼氏が飛び込んでくる。
その物音で驚き、逃げ出そうとする彼女を鎮めるために、
彼女の好物を少しずつ指で食べさせる。
彼氏は泣いていた。
あたしも泣いていた。
あたし達の家族が帰ってきた !!!
家主はあたし達の喜び様を見て微笑んでいた。
あたしはこれ以上無いほど、少なくともあたしの覚えている以上これ異常ないほど頭を下げ、
後日きちんと挨拶をさせていただくと、本当に感謝していますと、
貧困なボキャブラリーを呪いながら、必死で感謝の気持ちを伝えた。
車に乗せ、夢なのか、長かった夢なのか、それ共今が夢なのか、と、
幸せな、信じられない気持ちで帰途へ付く。
あたしは言う。
「きっと、今地球上で一番幸せだと感じているのはあたし達だ!」
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