“Day by day, in every way, I’m getting better and better.”
「日々に、あらゆる面で、
私は益々よくなってゆく」
クーエの有名な暗示文です。
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高校生だったある日、とても雲と空のきれいな良い日だった。
ひげもじゃの地理の先生が、
いきなり古ぼけたダサい目覚まし時計を大事そうに抱えてやってきた。
そして、
「とりあえずおまえら、これを聞け」
と言って勝手に時計を鳴らし始めた。
それは昔流行った、声が録音できるタイプのもので、
声で起こしてあげられるプレゼント、というとても恥ずかしいものだ。
おまけに軽く10年は経過しているのではないかという音質だし、
デザインもダサく、ひどく古ぼけて見えた。
しかも何より中身がひどかった。
「○○(先生の下の名前らしい)くん♪○○くん♪朝でちゅよ~♪
おきて♪おきて♪おきて~♪」
新婚でなければできない恥ずかしい言葉の羅列。
声の主は女性で、とてもかわいらしい声だったが、
自分でも少し照れているらしく、聞いていてもわかった。
それを聞いて教室はドッと盛り上がる。
「ダセー!」「恥ずかしー!!」
様々な罵声が飛び交う。
盛り上がる教室内で、ひげもじゃ先生は苦笑いをしながら言う。
「まあそういうなよ。
これはうちの嫁が結婚した当初にくれたものなんだ」
盛り上がる教室をそのままに、先生は続けた。
「そして、結婚して二年目に死んだ俺の嫁の、唯一の肉声だ」
教室は水を打った様に静まりかえった。
彼の奥さんは、結婚して二年でなくなったらしい。
誰もそんな事を知らなかったので、罵声を浴びせてしまった生徒達は、
非常に罰が悪そうだったし、すでに泣き出していた女子も居た。
「普段は家から持ち出さないんだ。本当に大切にしていて」
大事そうにさすりながら続ける。
「今も毎日、これで起きてる。」
しばらく教室が静まり返った頃、ある生徒がおずおずと聞いた。
「でも、あの、・・・それ・・辛くないですか・・?」
先生は優しい笑顔で答えた。
「辛いかもな。いや、当時は聞くのも辛かったんだ。でも・・
毎朝、彼女を感じられるのは、今も昔も、とても幸せなんだ」
と言って笑った。
生徒達は何も言えず黙って先生を、古ぼけた時計を見つめていた。
「さっきも言ったように」
いきなり毅然とした目で先生が語りだす。
「普段は持ち出さないんだ。だから今日これを持ってきたのは理由がある。」
私達は黙って聞いた。
「私は当時貧乏で、彼女にろくに何もしてやれなかった。だが、彼女を愛していた。」
先生は、苦笑いをして続ける。
「だがよく、彼女の話を聞いていないといって、怒られたものだった。
亡くなる前日も、そんな事で喧嘩した覚えがある。
そして、後になって気づくんだよ。
大切な人との別れはいつも突然で、
誰も教えてくれないって、そんな当たり前の事。」
先生は優しい顔をしていった。
「だから、おまえらも、些細な事を、大切にしろ。
大切な人が急に居なくなった時、
そしてもう二度と会えなくなった時、
そういう些細な事が、一番後悔するんだ」
あれからもう8年も経つ。
身近な人間が死んだことのなかったあたしにも、
とうとう父との別れが近づく。
あたしは先生の言葉をできる限り守りたいと今も思っていて、
最期の旅行を計画したり、振袖を着て見せてあげたりと、
父が喜ぶであろう些細な事を大切にしているつもりだけれど、
やっぱり何をしても、結局後悔はするんだろうな、とは思う。
ただ、小さな事をしてあげられなかった後悔だけは、なるべく少なくしたい。
そう思って、あたしは今日も生きています。先生。
ひげもじゃの地理の先生が、
いきなり古ぼけたダサい目覚まし時計を大事そうに抱えてやってきた。
そして、
「とりあえずおまえら、これを聞け」
と言って勝手に時計を鳴らし始めた。
それは昔流行った、声が録音できるタイプのもので、
声で起こしてあげられるプレゼント、というとても恥ずかしいものだ。
おまけに軽く10年は経過しているのではないかという音質だし、
デザインもダサく、ひどく古ぼけて見えた。
しかも何より中身がひどかった。
「○○(先生の下の名前らしい)くん♪○○くん♪朝でちゅよ~♪
おきて♪おきて♪おきて~♪」
新婚でなければできない恥ずかしい言葉の羅列。
声の主は女性で、とてもかわいらしい声だったが、
自分でも少し照れているらしく、聞いていてもわかった。
それを聞いて教室はドッと盛り上がる。
「ダセー!」「恥ずかしー!!」
様々な罵声が飛び交う。
盛り上がる教室内で、ひげもじゃ先生は苦笑いをしながら言う。
「まあそういうなよ。
これはうちの嫁が結婚した当初にくれたものなんだ」
盛り上がる教室をそのままに、先生は続けた。
「そして、結婚して二年目に死んだ俺の嫁の、唯一の肉声だ」
教室は水を打った様に静まりかえった。
彼の奥さんは、結婚して二年でなくなったらしい。
誰もそんな事を知らなかったので、罵声を浴びせてしまった生徒達は、
非常に罰が悪そうだったし、すでに泣き出していた女子も居た。
「普段は家から持ち出さないんだ。本当に大切にしていて」
大事そうにさすりながら続ける。
「今も毎日、これで起きてる。」
しばらく教室が静まり返った頃、ある生徒がおずおずと聞いた。
「でも、あの、・・・それ・・辛くないですか・・?」
先生は優しい笑顔で答えた。
「辛いかもな。いや、当時は聞くのも辛かったんだ。でも・・
毎朝、彼女を感じられるのは、今も昔も、とても幸せなんだ」
と言って笑った。
生徒達は何も言えず黙って先生を、古ぼけた時計を見つめていた。
「さっきも言ったように」
いきなり毅然とした目で先生が語りだす。
「普段は持ち出さないんだ。だから今日これを持ってきたのは理由がある。」
私達は黙って聞いた。
「私は当時貧乏で、彼女にろくに何もしてやれなかった。だが、彼女を愛していた。」
先生は、苦笑いをして続ける。
「だがよく、彼女の話を聞いていないといって、怒られたものだった。
亡くなる前日も、そんな事で喧嘩した覚えがある。
そして、後になって気づくんだよ。
大切な人との別れはいつも突然で、
誰も教えてくれないって、そんな当たり前の事。」
先生は優しい顔をしていった。
「だから、おまえらも、些細な事を、大切にしろ。
大切な人が急に居なくなった時、
そしてもう二度と会えなくなった時、
そういう些細な事が、一番後悔するんだ」
あれからもう8年も経つ。
身近な人間が死んだことのなかったあたしにも、
とうとう父との別れが近づく。
あたしは先生の言葉をできる限り守りたいと今も思っていて、
最期の旅行を計画したり、振袖を着て見せてあげたりと、
父が喜ぶであろう些細な事を大切にしているつもりだけれど、
やっぱり何をしても、結局後悔はするんだろうな、とは思う。
ただ、小さな事をしてあげられなかった後悔だけは、なるべく少なくしたい。
そう思って、あたしは今日も生きています。先生。
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